僕等はまだ恋を知らない
教えてくれても……よかったのに。
ううん、きっと私のことを心配して何も言わなかったんだろうな。
時間があったら自分から聞こう。
「よしっ……」
大きく息を吸い込んで、玄関のドアノブに手を掛けた。
大翔にこれ以上心配をかけないためにも、いつもの私でいなきゃ。
ガチャリと玄関を開くと、ぼんやりと空を眺める後ろ姿がすぐに映った。
大翔………。
切なそうに空を見上げるその姿は、なんだか絵になるくらい綺麗。
儚さに隠れた美しさってところかな………。
私がカメラマンだったら、迷わずシャッターを切っただろう。