僕等はまだ恋を知らない
九条くん以上に好きになれる人が現れる気がしなかった。
本当に、運命だと思ったの。
口が悪くて、意地悪で、自分勝手。
優しくて、寂しがりやで、思いやりがある。
自分の弱さを理解して、成長し強くなれる人。
キラキラで、眩しい存在。
「そんな九条くんを忘れるなんて、できるわけないよ……………」
零れるように出た言葉は狭い空間に閉じ込められている。
カーテンが閉まったままの部屋は、朝でも案外暗い。
布団に潜り、ただひたすら弱い自分を感じる情けない時間。