僕等はまだ恋を知らない
パッと手を離したそこに見えたのは。
「沙耶………」
薄汚れた短いピンク色のリボンだった。
小さい頃、誕生日プレゼントとして貰ったもの。
髪の毛に結べなくなってからは目に見えるところにと思い、机に置いていた。
いつでも沙耶を近くに感じるために。
結べなくなってもお気に入りなのは変わらない。
でも、私にはもう必要のないもの。
切れたものは戻らない。
私と沙耶も同じ。
もう、あの頃には戻れないんだ。