僕等はまだ恋を知らない
嫌われたって頭の中で唱えても、私が沙耶を嫌いになることはできなかった。
一緒に過ごした日々の記憶は決して消えることはない。
たとえ全部嘘だったとしても、私がもらった幸せは本物だったから。
それに………。
今まで過ごした沙耶を疑いたくない。
親友だと言ってくれた言葉を信じさせて。
これ以上逃げたくないの。
前に進みたい。
ずっと脱ぎっぱなしだった制服を引っ張り出し、急いで身を包んだ。
シワのついたブレザーに、歪な形に広がっているスカート。
いつも制服の着こなしには気にかける方だけど、今はそんなこと考えている余裕もない。
薄暗い部屋から飛び出して、階段を勢いよく駆け下りた。