僕等はまだ恋を知らない
すぐに立ち上がり、屋上から離れようとしても。
「待てよ!」
九条くんにあっさり腕をつかまれた。
いつもならうるさいくらい響くチャイムの音よりも、私の心臓の音の方がよっぽど酷い。
九条くんにも聞こえそうなくらい響いてる。
「今のなんだよ!」
「なんでもないの!!忘れて!」
「なんでもないわけないだろ!?」
面と向かってこんなに叫ぶのも久しぶりだ。
何度反論の言葉を放っても、九条くんは手を離してくれない。
こんなはずじゃなかった。
沙耶の本当の気持ちを聞くためにここまで来たのに。
九条くんに告白しに来たわけじゃないよ。