僕等はまだ恋を知らない
「そしたら澪はどっちも選べないって顔してるんだもん。ついカッとなっちゃってごめんね」
またこちらに顔を向け、長い黒髪がふわふわと揺れている。
「自分の気持ちをコントロールできないくらい、大翔くんが好きなの……」
あの時、沙耶があんなに感情的になっていたのがようやくわかった。
始まりは大翔への想い。
そして、私への想い。
沙耶は私のことを考えてあんなこと言ったんだ。
言い方はちょっと遠回しすぎるし、勘違いして当たり前なくらいだけど。
不器用な沙耶の恋心だった。
「ずっと謝りたかったけど………なんだか自分から行動するのが嫌で、意地悪しちゃった」
そんなことない。
私だって悪いんだ。