僕等はまだ恋を知らない
「………私、行ってくる!!」
「いってらっしゃい」
ヒラヒラと手を振る沙耶に「うん!」と手を振り返してから走り出した。
「澪……」
九条くんのことで頭をいっぱいにしていたせいで。
「これが最後の意地悪だよ、大好き」
沙耶の最後の言葉に気づかなかった。
ただ前を見て、九条くんの居る教室までひたすら走る。
こんなに九条くんで頭をいっぱいにしていると、出会ったときからのことが頭に蘇ってきた。
九条くんと出会ってまだ間もない。
1年も経ってないのに、こんなに想いが溢れてくる。
君と出会えたのはきっと運命で。
そして、奇跡だ。