僕等はまだ恋を知らない
疲れもわからなくなるくらい、今すぐ九条くんに会いたかった。
荒くなる呼吸も、リズムが変わる早さも、すれ違う人も。
全部、感じない。
見慣れたはずの校内もなんだかおかしくて。
全てがキラキラと輝いて見えた。
「………………っ……はぁ……」
ようやくたどり着いた教室の前で乱れた呼吸を整えて、
ドアからこっそりと様子を見てみた。
九条くん、まだ居るかな………?
「……………あー、ようやく終わった」
ぐったりと机に倒れ込み「ったく、鬼すぎだぜあのヤロー」と積み重なったプリントをぼんやりと見ている。
よかった、まだ居た……。