僕等はまだ恋を知らない


ガラッとドアを開けると、さっきまでぐったりしていた九条くんの体が跳ね上がった。


「なっ、倉橋……!?」


勢いで揺れた机からはひらひらとプリントが舞っている。


なんだか、落ち葉みたい。


夕日に照らされた教室の雰囲気はまるで秋色一色。


秋なんてまだ先なのにおかしいね。

初めて会った季節の再現だ。


コツコツと相変わらずリズムの良い九条くんの足音と。

ペッタン、パッタンと気の抜けた私の足音。


どちらの音も聞こえなくなったら、すぐ目の前に。



「あのさ、倉橋………」



海より青く、空より澄んだ青い瞳。

光を浴びてキラキラと輝く髪。

白くて透き通るような肌。


大好きな九条くんが立っていた。


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