僕等はまだ恋を知らない
「なに?」
これから告白するなんて思いもしないくらいのいつもと変わらない声で返事をした。
キョロキョロと視線を泳がせて「っと……あの……」と最初の言葉に悩む九条くんをただ待ち続ける。
余裕そうに立っているけど、本当はかなり心臓の音がうるさい。
九条くんの言葉を聞き逃してしまいそうなくらいだ。
少し待っても耳に入るのは時計の秒針の音と、外で活動中の生徒たちの掛け声だけ。
静まり返った教室は居心地が悪い。
こんなに静かだと私の荒い呼吸とか、心臓の音とか聞こえそうだよ………。
「ーーーいきなりあんなこと言って困ったよね」
沈黙に耐えきれなくなったのは私が先だった。
ヘラヘラと力のない笑顔でそう言いながら、近くにあった机に寄り掛かり、
「なんだか寝込みを襲った気分だったよ〜」
と言葉を繋げた。