僕等はまだ恋を知らない


告白するタイミングがなかなかつかめない。


なんて言えばいいんだろう。

九条くんが寝ているときはあんなに簡単に言えたのに。

目の前にするとこんなに言葉に詰まっちゃうんだ。



「だからね、その…………」


「好き」と言う前に余計なことばかりが頭に浮かんでくる。

たった一言。

たった2文字。


どうして、言えないの。



「あはは…………えっと……」



「バカかお前は」


「え?」



ふわりと優しい香りが近づいた。


てっきり抱きしめられるのかと思ったら、全くの予想外で。



「……………っ……」



風が吹いたような一瞬の出来事。


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