僕等はまだ恋を知らない
「澪の告白相手も居なくなったことだし、そろそろ帰ろうか」
「あ、うん」
グイッと大翔に腕を掴まれ、校舎裏から離れようとすると。
「おい……何どさくさに紛れて一緒に帰ろうとしてんだよ」
直のどす黒い声が聞こえ、反動で体がビクッと震えた。
「てめぇは神楽と2人で帰れよ!澪は俺と2人きりの方がいいんだ」
「せっかくの休みなんだからみんなで帰った方が楽しくないか?」
「楽しくねぇよ」
大翔から引き離すように、今度は直に腕を引っ張られた。
腕の中にすっぽりとはまり、出られる雰囲気はない。
「神楽だって香月と2人がいいだろ?」
「んー、そうだなぁ……」
チラリと大翔を見ながら、口をもごもごと動かす沙耶。
見つめられてる大翔はちょっと焦り気味だ。