僕等はまだ恋を知らない
「私もみんなで一緒に帰りたいな。たまにはいいでしょ、直?」
腕に包囲されながらも顔を上げると間近に直の顔が映る。
最近はこんなに顔が近くても、変な緊張はしなくなってきていた。
ドキドキはするけど、なんだか心地がいい鼓動の音。
「はぁ………仕方ねぇな、今日だけだぞ?」
「ありがとう」
ため息をついた後はぎゅっと手を繋ぎ直して、お互いの顔を見合わせた。
「私たちも繋ぐ?」
「そういうのは、その……付き合ってからな」
「ふふっ、わかってるよ」
手を繋ぐ私と直の前には、距離が近い沙耶と大翔が並んで歩いている。
淀んだ空気が漂う校舎裏から離れた後は、隠れていた太陽が余計に眩しい。