僕等はまだ恋を知らない
「ねぇっ!!九条くん見なかった?」
ガラッと勢いよく開いたドアの前には、数名の女の子が息を切らしながら立っていた。
九条くんのファンの子たちかな?
「見てないよー」
「九条くん昼休みはいつも教室に居ないし」
クラスの女の子たちの声を聞いて、私も「たしかに居ないよね」と言葉を続けた。
授業の間の休み時間には教室でずっと音楽を聞いていたり、携帯をいじってたりする九条くん。
でも、昼休みは決まっていつも教室に居ない。
授業が終わったと同時くらいに居なくなるのを、何度も隣で見ていた。
さすがに消えるのが早すぎてみんな追いつけないみたい。