僕等はまだ恋を知らない





赤くて長い、カーペットみたい。

家の庭にある落ち葉を見ていたら、そう感じた。



うるさいくらい耳に残っていた蝉の鳴き声はいつの間にか消えていて、いつもとは違う合唱が聞こえてくる。


冷たく澄んだ、秋の匂い。



「あっ……」


落ち葉を眺めていると、隣の家の扉がガチャリと開いたのに気がついた。



「大翔、おはよう!」


「おっ!澪がもう居るなんて珍しいな。おはよ」



大翔の爽やかな笑顔は、私の1日の始まりの合図。

あぁ、今日もいつもの日常が始まるんだなぁ。


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