僕等はまだ恋を知らない
「澪ってさ、最近九条くんと仲良いよね?」
「え?そんなことないよ?」
突然何を言い出すかと思えば九条くんのことだなんて。
沙耶から九条くんの話題を振られるのは初めてかもしれない。
「ずっと澪の名前呼んでるし、最近の昼休みは教室に居るんだもん」
まぁ、確かに私にも心当たりがなくもない。
公園で九条くんに助けられたあの日から、私たちの距離は一気に縮まったと思う。
隣の席なのに話しかけられたことなんて一度もなかったし、何より目があった事もなかったのだ。
でも、今はまるで逆。
九条くんから「倉橋」と言う名前を無駄に連呼される。
しかも「倉橋、教科書見して」とか「倉橋、ジュース買って来て」などまるでパシリ扱い。
呼び方が「野蛮女」から「倉橋」になっただけでもマシだとは思えるけど、何か違う気もする。