僕等はまだ恋を知らない
「九条くん。こういうの、いる?」
うつ伏せになっている九条くんの耳元で、手に持っているものをガサガサと揺らした。
その音に反応し、ゆっくりと顔が上がる。
「さっすが倉橋!わかってるぅ」
「わっ!ちょっと!」
バッと奪うように持っていかれ、すぐにガサガサと中身を取り出し始めた。
つい九条くんの言葉を思い出して、パンを買って来ちゃったよ。
たぶん甘いものが好きだろうと思われる九条くんには、私のお気に入りのクリームパンを買って来てあげた。
あの日クッキーを買っていたのが未だに印象に残っている。
「さっきまで寝てたくせに……」
なんだか、ため息が出そう。