僕等はまだ恋を知らない
「ううん、やっぱりなんでもない」
「そう?」
沙耶のいつもの優しい笑顔に違和感を感じながらも、そのまま受け流した。
大翔がどうとか言ってたような…………。
気のせい?
あまり深く追求しないほうがいいかな。
沙耶はいつもそう。
自分の気持ちを隠して、私のことばかり。
悩んでることがあるなら言ってほしい。
たまにはわがままだって言っていいんだよ?
でも、そう言ってしまうとさらに困らせてしまうから言えないまま。
沙耶が自分から本当のことを言うまで待つことにしている。