ウサギとカメの物語
「くっそ〜、今日は飲み明かすよ!コズ、覚悟してね!」
「望むところだ」
サンキュ!と勢いよく鼻息を荒くして、奈々は素早く髪の毛と体を洗うと温泉に飛び込んだ。
体を洗い終えた私も、奈々に少し遅れて温泉に入って彼女の隣へ移動する。
2人で薄暗い大浴場を見渡しながら、ふぅ〜っと一息ついた。
「あ〜、気持ちいい」
「日頃の疲れが癒されるね〜」
完全にすっぴんで、裸で。
奈々は胸が大きめで、私は貧乳で。
なにもかも分かり合ってる私たちの、至福の時間。
何も考えずに、あったかいお湯に浸かれる幸せ。
これがあるから、社員旅行に来てよかったって思えるんだよね。
しばらく2人でぼんやりしていたけれど、先に奈々が立ち上がる。
彼女は基本的に長風呂が苦手で、ちょっと体が温まればそれで充分なタイプなのだ。
「先に上がるね!」
「相変わらず早いね」
「コズが長すぎなの」
ハイハイ、と返事をして大浴場を出ていく奈々を笑顔で見送った。
私はまだまだ上がりませんよ〜。
ひとり暮らしのアパートじゃこんなに広々とお風呂に入れないからね。
こういう時くらい手足伸ばして開放感の中でゆっくりしたい。
宴会を終えて大浴場に続々やって来る社員たちのボディチェックを密かにしたり、美女軍団のすっぴんを盗み見たり。
おぉ、貧乳仲間!とか。
え、あの人のすっぴんってあんななの!?とか。
意外に楽しみながら、1人でお風呂に長い間浸かり続けた。