ウサギとカメの物語
なんだか興奮冷めやらないまま、心臓のバクバクが落ち着かないまま。
鍵に書いてある部屋へ向かう。
なんにせよ、両想いになれたってことよね!
喜ばしいことだわ!
奈々にはきっちり明日にでも説明してもらわないと。
1人でニヤニヤしながら廊下を歩き、ひとつ上の階の田嶋の部屋に入った。
ドサッと部屋に荷物を下ろし、さっさとテレビをつける。
そしてボストンバッグから焼酎やらおつまみやらを出して、備え付けの冷蔵庫からビールを取り出した。
ビールはさすがに持ってこなかったので、部屋にあらかじめ用意されている有料の缶ビールを飲むことにしていたのだ。
ビールを取り出してすぐに缶のプルトップを開けて、立ったままゴクゴク飲んだ。
「美味いっ!」
ひとり言をつぶやいて大きくてふっくらした座布団に腰を下ろし、持ってきたおつまみを開けた。
もうこうなったら、テレビでも見ながら1人でパーティーしちゃおうって開き直る。
1人で飲むのは苦じゃない。
このスタイルは毎日家でやってることだから。
ものの10分でひと缶を飲み干した私は、また冷蔵庫からもう1本ビールを持ってくる。
スルメを噛み噛みしつつ、畳の床にごろ寝したりして。
完全にマイホームスタイルでリラックスモードに突入した私は、どこかのオヤジみたいにテレビを見て笑いながらビールを口に運んでいた。
きっちり着ていた浴衣は崩れ去り、もういっそのこと浴衣なんて脱いじゃおうかな、なんて思っていた時。
部屋のドアが開く音が聞こえた。