ウサギとカメの物語
8 ウサギの暴走と、カメの謎な思考回路。
カメ男と2人で(ほぼ強制的に)会社帰りにイルミネーションを見て帰ってから、2週間ほどが経過した。
この2週間の間にヤツと1度だけ退社時間が一緒になり、思い切って「酔いどれ都」にでも誘おうかと思ったのに。
その帰り道の途中で、別れを惜しむこともなく「行くところがあるから」と私を置いてどこかへ行ってしまった。
数少ないチャンスを逃した私は、ブルーな気持ちになりながら寒空の下一人ぼっちで帰路についたのだ。
私とカメ男の関係って、一体全体なんだっていうんだろう?
傍から見たら「仲のいい同期」?
実際ヤツの口からも私はそういう存在だと言われたけれども。
イルミネーションの魔法にでもかかってうっかりキュンとしちゃったりして、舞い上がったんだけどさ。
角度を変えてみれば、「大野とは仲いい同期っていうだけで、それ以上でもそれ以下でもない」っていう予防線を張られたような気がしなくもない。
ただ、ヤツの場合。
そこまで考えて発言しているとも思えなくて。
無限の負のループってやつに足を踏み入れてしまったみたいで、私の頭の中はぐるぐるなるとの渦巻きみたいにいつまで経っても同じことを繰り返し考えるようになっていた。
こうやって悶々と考えるのが嫌だから、いっつも早く答えを求めちゃうんだよね、私って。
あなたが好き!私のこと、どう思ってるの?って。
すぐに相手に伝えたくなっちゃう。
そしてその波はすでにカメ男に対してもジワジワと近づいてきていて、さっさと自分の気持ちを打ち明けたい気分にならざるを得なかった。
ヤツだけは他の男と違うぞ。
ちょっと特殊なんだから、焦ったらその分マイナスに働くんだぞ。
って、どうにか自分に言い聞かせて、好きな気持ちを隠していた。