ウサギとカメの物語
帰りにみんなに挨拶をして回っていた時、何故かカメ男は不在だった。
ヤツのジャケットはイスに掛けられたままだったし、まだ退社してなさそうだったけど、わざわざ探し出すっていうのもおかしい気がして。
そのまま会社を出た。
今日は祝日だから、街中はものすごく混んでいて。
しかもクリスマス一色で盛り上がっていた。
どこもかしこも赤と緑。
サンタクロースとトナカイばっか。
モミの木のクリスマスツリーとか、お店に必ずと言っていいほど置いてある。
あっちに恋人、こっちにも恋人、ついでにそっちにも恋人。
なんか買ってやるよぉ〜。
えーそんなぁ〜いいのぉ?
いいに決まってるだろ〜。
きゃー、じゃあ。ゆ、び、わ。
いいよー!買いに行こうー!
とかアホな会話でもしてんじゃないでしょうね。
妬み嫉み満載の目でイチャつく奴らを睨みつけてアーケード街を駅の方に向かいながら歩いていると。
ふと目に止まったお店。
普段は中にも入らない、ちょっと背伸びしたお値段のアクセサリーが売ってるお店だった。
冬のボーナスも入ったし、ひとつくらい女子力の高いものでも買っておくか!
と、勢いでお店に入ってみた。
が、しかし。
入って数秒で後悔した。
店内はそれこそラブラブな恋人同士でいっぱい。
女1人で来てる客なんて、私くらいしかいなかった。