ウサギとカメの物語
事務課は私のいる本社では8人体制なんだけど、岩沼支店では3人。
リーダーの遊佐さんと、50代のパート勤務の鳥谷部さんという女の人。
この2人がまぁものすごいおしゃべりで。
私だってかなりのおしゃべりだけど、それを凌ぐほどのおしゃべりで。
年末の大忙しの時期だっていうのに、のほほんとフリートークを展開しながら仕事をしているっていう凄技を繰り出していた。
そのくせ、やることはちゃんとやってるから素晴らしい。
私も10年後くらいにはこうなっていたいな、って思うくらい、なかなかの仕事ぶりだった。
遊佐さんには4歳の娘さんがいるらしく、本日はクリスマスイブということで鳥谷部さんがそこらへんを突っ込んで会話している。
「今日は娘さんにサンタさんは来るのかしらね〜?」
「ちゃんと用意しましたよー!娘がユメミちゃんっていう人形にハマってるんで、それの着替えセットにしたんです〜。サンタさん来ないかなって毎日外眺めてますよ」
「まぁ可愛いこと〜」
「でも着替えセット、めちゃくちゃ種類あって悩みましたけどね。結局奥さんに任せちゃった」
「それが1番よねぇ。いらないって言われたらショックだしぃ」
あははおほほ、と呑気に会話する2人の狭間で、私は微笑ましいなぁとほっこりする。
毎日毎日、期日までにこれを仕上げろとか、お客様の厳しいクレームを聞いたりとか、何十人といるドライバーさんとの連携とか。
そういう日々に揉まれていたから、こんなのんびりした支店もいいなぁ〜、なんて思ったりしてしまった。
なんならもういっそのことこの支店に異動したい。
本社からオサラバしたい。
だって、カメ男がいるんだもん。
振られたも同然だってのに、私の頭は気がつくとカメ男のことを考えそうになってしまって。
早く消え去って欲しい、と切に願うばかりだった。