あたたかい冬の日に雨降り

 交わす言葉は少ないけれど、無言が痛みに変わったりはしない。


 それくらい長い間、こいつの傍にいたつもりだし、同じようにこいつもそう思ってるはずだ。


「どうかした?」


 じっと眺めていたからか、葉月は不思議に思ったのか首を傾げる。


 そんな様子に、なぜか面白くなって、小さく笑った。


 びっくりしたような顔の葉月はすぐにもとの調子に戻って、


「寒いし、チビたち任せっきりだし、早く帰ろっか」


 なんて、口角を少し上げて言っていた。


 そんな言葉を合図に、水分の多い雪で覆われた道を、ふたり並んで歩き出す。


「奏汰はね、家でチビたちの面倒見てくれてるんだ。というか、イチを家に招くの初めてだったね。ちょっと緊張しちゃうかも」


 寒さで赤くなった鼻の頭を擦りながら、葉月は照れ臭そうに笑った。


 ――こいつと奏汰が結婚してから、もう数年経った。


 同じ会社で働いていたのが、もうずっと前のことのように感じられる。


 結婚して地元に戻った葉月は、マンションを借りて奏汰と子供と生活しているらしい。


 生まれたのは、双子の女の子と男の子。


 雰囲気が前よりもっと柔らかくなったのは、やっぱり子供ができたからだろうな。


 やっぱり、葉月は少し変わったよな。

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