Memories of Fire
政略結婚……?
その後、結局クラウスは律儀に約束を守り、ソフィーに会いに来なかった。
イライラする日々を過ごしつつも、ソフィーは、自分は“政略結婚”をするのだと自身に言い聞かせた。いちいち彼の言動に腹を立てる必要はない。
つまり、意地になっていたのだ……
そして今日は婚約式。
ソフィーは自室で仕度を整え、会場である城の大広間へ向かう。すると、扉の前にはタキシード姿のクラウスがすでに待機していた。
ソフィーに気づき、彼は眼鏡の奥の目を細めて軽く会釈をしてくる。
「お久しぶりですね、ソフィー」
ずっと婚約者を放っておいて、澄ました笑顔である。
「お元気そうね」
「おかげさまで。ソフィーも今日は一段と美しいですね。そのドレスも似合っています」
今日のドレスはフラメ王国の象徴の炎をイメージした真っ赤なプリンセスラインだ。
目の前の婚約者が会いに来ないと宣言したせいで、ドレス選びは一人で進めた。もちろん、ソフィーは自分の希望を言うだけで、細かいことは侍女がやってくれたけれど……
「ええ。誰かの意見を聞かなくても良かったので、ドレス選びはスムーズに進んだわ」
皮肉を込めて言ったつもりだったが、クラウスは特に表情を変えることなく「そうですか」と言った。それからソフィーの手をとって、時間になって開かれた扉から広間へ入っていく。
イライラする日々を過ごしつつも、ソフィーは、自分は“政略結婚”をするのだと自身に言い聞かせた。いちいち彼の言動に腹を立てる必要はない。
つまり、意地になっていたのだ……
そして今日は婚約式。
ソフィーは自室で仕度を整え、会場である城の大広間へ向かう。すると、扉の前にはタキシード姿のクラウスがすでに待機していた。
ソフィーに気づき、彼は眼鏡の奥の目を細めて軽く会釈をしてくる。
「お久しぶりですね、ソフィー」
ずっと婚約者を放っておいて、澄ました笑顔である。
「お元気そうね」
「おかげさまで。ソフィーも今日は一段と美しいですね。そのドレスも似合っています」
今日のドレスはフラメ王国の象徴の炎をイメージした真っ赤なプリンセスラインだ。
目の前の婚約者が会いに来ないと宣言したせいで、ドレス選びは一人で進めた。もちろん、ソフィーは自分の希望を言うだけで、細かいことは侍女がやってくれたけれど……
「ええ。誰かの意見を聞かなくても良かったので、ドレス選びはスムーズに進んだわ」
皮肉を込めて言ったつもりだったが、クラウスは特に表情を変えることなく「そうですか」と言った。それからソフィーの手をとって、時間になって開かれた扉から広間へ入っていく。