Memories of Fire
「酔っていたら……介抱してくださいますか?」
「い、いい加減にして」
最後だけ耳元で吐息たっぷりに囁かれ、ソフィーの身体が震える。彼女はパシッとクラウスの手を叩いてそれを誤魔化した。叩かれた彼は、今度は素直に身体を離す。
「まったく! もういいから、帰るわよ。介抱だなんて言って……嘘ばかりなんだから……」
ぶつぶつと文句を言いつつ、広間の出口へ向かう。
途中、一番上の娘カーヤに声をかけたら、“わかっている”という表情で従姉妹たちと城に滞在する約束をしたと言われてしまった。きっとクラウスがパーティ前にそう提案したに違いない。
ソフィーはむすっとして彼女の後をついてきていたクラウスを振り返る。彼は眼鏡の奥の瞳を細めて彼女を見つめている。
「その目、嫌いよ。前を見て歩いてちょうだい」
そう言いつつも、ソフィーはクラウスの腕に自分のそれを絡めて彼と歩き出す。
「光栄ですよ、ソフィー。そんなに私のことが好きだなんて」
「そんなこと、一言も言っていないでしょう。バカね」
澄まして言ったつもりだったけれど、最後は少し笑ってしまった。
それを受けて、また愉快そうに笑ったクラウスだったが、ソフィーの言葉に従って前だけを見てゆっくり歩いてくれた。彼女が彼に顔を見られたくないと知っているから。
クラウスには敵わない。でもきっと、それでいいのだ。二人の関係は……
ソフィーはこみ上げてくる可笑しさに、ほんの少しだけ緩んでしまう頬を彼の腕に摺り寄せた。
「い、いい加減にして」
最後だけ耳元で吐息たっぷりに囁かれ、ソフィーの身体が震える。彼女はパシッとクラウスの手を叩いてそれを誤魔化した。叩かれた彼は、今度は素直に身体を離す。
「まったく! もういいから、帰るわよ。介抱だなんて言って……嘘ばかりなんだから……」
ぶつぶつと文句を言いつつ、広間の出口へ向かう。
途中、一番上の娘カーヤに声をかけたら、“わかっている”という表情で従姉妹たちと城に滞在する約束をしたと言われてしまった。きっとクラウスがパーティ前にそう提案したに違いない。
ソフィーはむすっとして彼女の後をついてきていたクラウスを振り返る。彼は眼鏡の奥の瞳を細めて彼女を見つめている。
「その目、嫌いよ。前を見て歩いてちょうだい」
そう言いつつも、ソフィーはクラウスの腕に自分のそれを絡めて彼と歩き出す。
「光栄ですよ、ソフィー。そんなに私のことが好きだなんて」
「そんなこと、一言も言っていないでしょう。バカね」
澄まして言ったつもりだったけれど、最後は少し笑ってしまった。
それを受けて、また愉快そうに笑ったクラウスだったが、ソフィーの言葉に従って前だけを見てゆっくり歩いてくれた。彼女が彼に顔を見られたくないと知っているから。
クラウスには敵わない。でもきっと、それでいいのだ。二人の関係は……
ソフィーはこみ上げてくる可笑しさに、ほんの少しだけ緩んでしまう頬を彼の腕に摺り寄せた。