Memories of Fire
第二王女マリーの場合
軽い男
「マリー! クラウスとソフィー姉様、抜け出そうとしてるよ」
エルマーが大広間の扉の方を指差しながら、マリーのドレスのスカートを引っ張る。
「ソフィー姉様がクラウスと腕組むのなんて珍しいよね。ヴォルフとフローラに当てられたのかな? でも、いいなぁ。ヴォルフってばあんなにデレデレしちゃって……フローラも照れて困ってるけど、嬉しそうだし。あー! 新婚夫婦っていいよねぇ……俺までドキドキしちゃう!」
「貴方がドキドキしてどうするのよ」
普段以上にテンションの高いエルマーを見て、マリーは肩を竦めた。祝いの席とは言っても、限度があるというものだ。
そんな興奮冷めやらぬエルマーは、マリーの夫である。ヴォルフやマリーたちの従兄弟でもあり、フラメ王国軍の総指揮官を務めている。正装として軍服を着ているが、迷路のようなぐるぐるした模様のヘアバンドをしていて格好がおかしい。
マリーは、ヴォルフの次姉。ひとつ違いのせいか、ヴォルフからは双子のように扱われていて、彼には手を焼かされている。
「まぁ、ヴォルフもやっとフローラの心を掴めたわけだし、おめでたいことには変わりないわね」
「俺も当てられそうだなー。ね、マリー! 今日は新婚設定でヤ――ぐっ、げほっ」
「エルマー、黙って」
調子に乗っているエルマーの背中を思いきり叩くと、彼は咽て涙目にマリーを見つめてくる。
「まったく……貴方は本当にデリカシーってものがないわよね」
「えー? クラウスみたいなむっつりよりいいでしょー?」
「はぁ……もういいから、これ食べていて」
マリーは大きくため息をついて、これ以上下品な言葉が出てこないよう、エルマーの口に一口サイズのケーキを三つほど詰め込んだ。
エルマーが大広間の扉の方を指差しながら、マリーのドレスのスカートを引っ張る。
「ソフィー姉様がクラウスと腕組むのなんて珍しいよね。ヴォルフとフローラに当てられたのかな? でも、いいなぁ。ヴォルフってばあんなにデレデレしちゃって……フローラも照れて困ってるけど、嬉しそうだし。あー! 新婚夫婦っていいよねぇ……俺までドキドキしちゃう!」
「貴方がドキドキしてどうするのよ」
普段以上にテンションの高いエルマーを見て、マリーは肩を竦めた。祝いの席とは言っても、限度があるというものだ。
そんな興奮冷めやらぬエルマーは、マリーの夫である。ヴォルフやマリーたちの従兄弟でもあり、フラメ王国軍の総指揮官を務めている。正装として軍服を着ているが、迷路のようなぐるぐるした模様のヘアバンドをしていて格好がおかしい。
マリーは、ヴォルフの次姉。ひとつ違いのせいか、ヴォルフからは双子のように扱われていて、彼には手を焼かされている。
「まぁ、ヴォルフもやっとフローラの心を掴めたわけだし、おめでたいことには変わりないわね」
「俺も当てられそうだなー。ね、マリー! 今日は新婚設定でヤ――ぐっ、げほっ」
「エルマー、黙って」
調子に乗っているエルマーの背中を思いきり叩くと、彼は咽て涙目にマリーを見つめてくる。
「まったく……貴方は本当にデリカシーってものがないわよね」
「えー? クラウスみたいなむっつりよりいいでしょー?」
「はぁ……もういいから、これ食べていて」
マリーは大きくため息をついて、これ以上下品な言葉が出てこないよう、エルマーの口に一口サイズのケーキを三つほど詰め込んだ。