Memories of Fire
「待って、エルマー。ご、ごめんね? 別に、エルマーを責めたかったわけじゃなくて……」

 せっかくの祝いの席。ちょっとした思い出話のつもりが、マリーもお酒が入って、いろいろとエルマーのことばかり蒸し返してしまったことを反省する。

「でも、俺のプロポーズはやり直しも不満だったんでしょ?」
「ち、違うわよ……プロポーズは嬉しかったわ。ただ、ヴォルフとフローラを見ていたら、あの頃のことが懐かしくて……ほら、私たちはずっと一緒に居たから、二人みたいな燃え上がる恋という感じじゃなかったでしょう? だから、ちょっと羨ましくなっちゃったの」

 とはいえ、ヴォルフほど暑苦しい求愛をされても困ったとは思う。最初は、フローラがヴォルフの強引さに言い包められてしまったのではないかと心配していたものだ。だが、フローラの様子を見ると、とても幸せそうで、ヴォルフに抱き寄せられて頬を染める姿は可愛らしい。

「ふーん?」

 エルマーは興味なさそうにマリーの話を聞いている。首を捻ってマリーをじっと見つめる視線は……いじけている。

「……わ、わかったわよ。し、新婚設定……する……?」

 その途端、エルマーの口角がくいっと上がった。こういう表情は、クラウスかヴォルフか……とにかくあの二人の影響に違いない。

 泣きながらマリーに縋り付いてきていた子犬はどこへやら……見習わなくてもいいところばかり吸収した気がしてならない。

「マリー、大好き!」

 しかし、それはほんの一瞬で、エルマーはすぐにいつも通りの軽い調子に戻り、マリーに抱きつく。

「そうと決まれば今すぐ帰ろう!」

 嬉しそうにマリーの手を引いたエルマー。マリーは彼の腕に自分の腕を絡め、苦笑する。

 惚れた方が負け――それでいいのだ。だって、今、とても幸せだから。
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