Memories of Fire
ああ、また始まった――ハンナはもう一口サラダを頬張り、再びもぐもぐしつつ、眉を顰めてみせた。
ジークベルトはいつもハンナに肉を食べさせたがる。否、肉だけではなくパスタやパン、野菜以外のもの全般だ。
「何よ、細い細いって……ジークは私にそれしか言わないのね」
最初は親同士、主にハンナの両親である国王夫妻が乗り気の縁談だった。だが、婚約者としてそれなりに長い付き合いをしてきたというのに、ジークベルトがハンナを恋人らしく扱ったことはほぼ皆無だ。
城へは足繁く通ってくれる。口うるさいのが難点だが、食事はできるだけ一緒にしてくれるし、デートもそれなりに気を遣ってくれている。たまに城に泊まって二人で夜を明かすこともあるけれど……そういうときは、決まってハンナからの提案で、ジークベルトはあまり乗り気ではなさそうだ。
エルマーはいつもマリーに「大好き」と言って、暑苦しいほどくっついている。お調子者故に、マリーとのあれこれはダダ漏れな部分があるが、あんな風に素直に愛情表現してもらえることは女にとってとても幸せなことだと思う。
クラウスはベタベタこそしないが、さらりと愛の言葉を囁くし、今まで堅物だと思っていたヴォルフさえ、フローラを前にして顔が緩みまくり、彼女に触りまくりである。
それなのに、ジークベルトときたら、口を開けば「もっと食べろ」「細すぎる」とハンナの体型に不満があるらしい。
ジークベルトはいつもハンナに肉を食べさせたがる。否、肉だけではなくパスタやパン、野菜以外のもの全般だ。
「何よ、細い細いって……ジークは私にそれしか言わないのね」
最初は親同士、主にハンナの両親である国王夫妻が乗り気の縁談だった。だが、婚約者としてそれなりに長い付き合いをしてきたというのに、ジークベルトがハンナを恋人らしく扱ったことはほぼ皆無だ。
城へは足繁く通ってくれる。口うるさいのが難点だが、食事はできるだけ一緒にしてくれるし、デートもそれなりに気を遣ってくれている。たまに城に泊まって二人で夜を明かすこともあるけれど……そういうときは、決まってハンナからの提案で、ジークベルトはあまり乗り気ではなさそうだ。
エルマーはいつもマリーに「大好き」と言って、暑苦しいほどくっついている。お調子者故に、マリーとのあれこれはダダ漏れな部分があるが、あんな風に素直に愛情表現してもらえることは女にとってとても幸せなことだと思う。
クラウスはベタベタこそしないが、さらりと愛の言葉を囁くし、今まで堅物だと思っていたヴォルフさえ、フローラを前にして顔が緩みまくり、彼女に触りまくりである。
それなのに、ジークベルトときたら、口を開けば「もっと食べろ」「細すぎる」とハンナの体型に不満があるらしい。