Memories of Fire
理由
翌日。ハンナは暇を持て余していた。
第三王女としての公務はあまり多くない。ソフィーやマリーは娘がいるから彼女たちと過ごす時間もあるし、フローラはヴォルフが公私共にそばに置きたがる。つまり、ジークベルトが東地区へ行っている今、ハンナの相手をしてくれる人がいない。
図書館で本を読んでみたり、音楽室でピアノに触ってみたりしたものの、すぐに飽きてしまい、城内をふらふらし始める。
ちょうど中庭に差し掛かったところ、エルマーがフローラとお茶をしているのが見えて、ハンナは彼らのテーブルへ足を向けた。
「エルマー、フローラ。マリー姉様は?」
ヴォルフは公務だろうが、マリーがいないのは珍しい。大抵、お茶を提案するのはマリーだからだ。
「あ、ハンナだ。やっほー! マリーはシルヴィアにせがまれて帰っちゃったんだ。昨日は俺がマリーを独占しちゃったからねー」
シルヴィアはエルマーとマリーの末の娘である。昨夜、姉夫婦たちは二人の時間を過ごすために娘たちを城に泊まらせたらしい。
「そうなのね。フローラ、ここいい?」
「もちろんです」
ハンナは侍女が用意してくれた椅子に座り、クッキーを手に取った。すると、エルマーがにんまりしてテーブルに肘をつく。
第三王女としての公務はあまり多くない。ソフィーやマリーは娘がいるから彼女たちと過ごす時間もあるし、フローラはヴォルフが公私共にそばに置きたがる。つまり、ジークベルトが東地区へ行っている今、ハンナの相手をしてくれる人がいない。
図書館で本を読んでみたり、音楽室でピアノに触ってみたりしたものの、すぐに飽きてしまい、城内をふらふらし始める。
ちょうど中庭に差し掛かったところ、エルマーがフローラとお茶をしているのが見えて、ハンナは彼らのテーブルへ足を向けた。
「エルマー、フローラ。マリー姉様は?」
ヴォルフは公務だろうが、マリーがいないのは珍しい。大抵、お茶を提案するのはマリーだからだ。
「あ、ハンナだ。やっほー! マリーはシルヴィアにせがまれて帰っちゃったんだ。昨日は俺がマリーを独占しちゃったからねー」
シルヴィアはエルマーとマリーの末の娘である。昨夜、姉夫婦たちは二人の時間を過ごすために娘たちを城に泊まらせたらしい。
「そうなのね。フローラ、ここいい?」
「もちろんです」
ハンナは侍女が用意してくれた椅子に座り、クッキーを手に取った。すると、エルマーがにんまりしてテーブルに肘をつく。