Memories of Fire
ヴォルフは素早くフローラをハンナのいやらしい手から救い、ぎゅっと自分の腕の中に隠した。この兄は……別に同性なのだし、少しくらい触ったって減るわけでもあるまい。
「フローラの胸が成長した理由を聞いていたのよ」
フンと顔を背けていじけてみせる。すると、ヴォルフははぁっとため息をついてエルマーに視線を移した。エルマーは肩を竦め、両手を挙げる。
「ジークがハンナに体力をつけさせようとするのが、気に入らないんだってさ」
「まったく、お前は……いよいよ結婚するっていう二十七歳が駄々をこねるな」
「ヴォルフ兄様だって、フローラを妃にしたくて我儘ばかりだったくせに」
ハンナが言い返すと、ヴォルフは苦虫を噛み潰したような顔になる。思い当たることがありすぎるのだろう。
「あ、あの……」
なんだかとても不穏な空気に、フローラがおずおずと声を出す。ヴォルフの腕から抜け出した彼女は、ハンナを振り返り、彼女の手を握った。
「ジークベルト様は、ハンナ様の体型が気に入らないからお食事について注意されるのではないと思いますよ。本当にハンナ様のことを心配なさっているのではないですか?」
「そんなことないわ。最近は全然城に泊まってくれないし、結婚を楽しみにしていたのは私だけなのよ……ジークは私のこと、嫌いなのかもしれないわ。腕を組んだだけで『くっつくな』なんて言うくらいだもの」
「フローラの胸が成長した理由を聞いていたのよ」
フンと顔を背けていじけてみせる。すると、ヴォルフははぁっとため息をついてエルマーに視線を移した。エルマーは肩を竦め、両手を挙げる。
「ジークがハンナに体力をつけさせようとするのが、気に入らないんだってさ」
「まったく、お前は……いよいよ結婚するっていう二十七歳が駄々をこねるな」
「ヴォルフ兄様だって、フローラを妃にしたくて我儘ばかりだったくせに」
ハンナが言い返すと、ヴォルフは苦虫を噛み潰したような顔になる。思い当たることがありすぎるのだろう。
「あ、あの……」
なんだかとても不穏な空気に、フローラがおずおずと声を出す。ヴォルフの腕から抜け出した彼女は、ハンナを振り返り、彼女の手を握った。
「ジークベルト様は、ハンナ様の体型が気に入らないからお食事について注意されるのではないと思いますよ。本当にハンナ様のことを心配なさっているのではないですか?」
「そんなことないわ。最近は全然城に泊まってくれないし、結婚を楽しみにしていたのは私だけなのよ……ジークは私のこと、嫌いなのかもしれないわ。腕を組んだだけで『くっつくな』なんて言うくらいだもの」