あなたに伝えたくて
『ここまでくればヘーキかな。』

龍星くんは、そう言うと私の方を向いた。

『う、うん。そうだね。あの…手を…』

『あ、ごめん。』

龍星くんの手が離れたらなんだか切なくなった。

『こちらこそ、助けてくれてありがとうね!』

『いや、俺のせいだろ?俺こそごめんな。』

『大丈夫だよ!』

そう言うと私の頭をくしゃくしゃとした。

さっきの手が離れた時の切なさといいくしゃくしゃとしてくれた嬉しさといいなんだろ。

そして、ほっとしている自分がいた。

だから、自分が泣いてることにも気付かなかった。

龍星くんは、『え、俺なんかやばいこと言った? やっぱり、怖かったよな? ごめんな。もっと早く駆けつけてれば…』と自分を責めている。

だから、私はなんとか誤解を解こうと話した。

『ち、違うんだよ。さっきのことで泣いたんじゃないの。今まで、人に助けてもらったりとかなかったから。なんだか、ホッとして。』

そこから、さっき感じた嬉しさとかについても話そうか迷ったけど、それは自分の心にしまっておいた。

私が話し終えると龍星くんは私を抱きしめて言った。

『もっと、頼れよ。 俺で良ければ何でもすんだからよ。』

と耳元で言ってきた。
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