ヴァイス・プレジデント番外編
ヤマトさんに初対面の人の印象を訊くと、たいてい「ちょっと太め」とか「表情なくて怖い」とか、見た目のことが返ってくる。

こんなふうに、内面について何か言うなんて、まずない。

きっとお兄さんの相手だから、彼なりに一所懸命に観察してきたんだ。

初めて会う人に囲まれて、苦手な場だったろうに、それでも彼女のことを知るために、頑張って会話してきたんだ。



『延大さんは…?』

『幸せそうだったよ。相手の人とも気が合ってるみたいで。向こうのご両親にも、気に入られてた』



私はまた、そうですか、とだけ言い、他になんて言ったらいいかわからなくなってしまった。

すず、と私を呼んで、ヤマトさんが腕に力をこめる。

たぶん彼も、私と同じ思いだ。



『俺、どうするのがいいのか、わからない』





再び鳴ったチャイムに、玄関のロックを解除すると、小振りのキャリーバッグを引いた延大さんが入ってきた。



「久しぶり、元気そうだね、神谷ちゃん」

「本当に、お久しぶりです」



夏前にヤマトさんたちと遊んだことがあって、私が延大さんに会うのは、それ以来だ。

相変わらず陽気に微笑んで、靴を脱ぎながら、お土産、と私にビニールの袋を差し出す。

少し重たいその中身は、細長い紙箱だった。



「わあ、コーディアルですね!」

「効能はデトックスだって。綺麗になっちゃってね」



ありがとうございます、と英国製のハーブドリンクの綺麗な瓶をとり出しながら言うと、変わらない優しい瞳がにこっと笑う。

スリッパを出そうとすると、いいよ、と断られたので、そのまま上がってもらった。



「ヤマトは?」

「まだお休みなんです。昨日、だいぶ飲んでらしたようなので」

「えっ、そうなの? 俺といた時は、そうでもなかったけど」

「そうなんですか」



驚くと、延大さんも驚いたようで、目が合う。

< 114 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop