ヴァイス・プレジデント番外編
ごめん、と言いたいんだろう。

祝福してるよって伝えたいんだろう。


延大さん、ヤマトさんは、この結婚に反対したいわけじゃないんです。

ただ、あなたに幸せになってほしいだけなんです。

もっと貪欲に、自分の幸せを目指してほしいだけなんです。


ヤマトさんは、自分勝手で我慢知らずだから。

延大さんが、なんでもっとわがままにならないのか、理解できないんです。

いつも延大さんだけ耐え忍んでばかりなように見えて、それがもどかしくて、悲しくて、少しだけ腹立たしいんです。


それを、わかってあげてください。


なんて。

私が言わなくても、きっともう延大さんは、おわかりですよね。

だからこうして、ヤマトさんに心の内をさらけ出させてあげるために、忙しい中、会いに来てくださったんですよね。


でも延大さん。

こんな出発間際の時間をあえて選んだのは、これなら長く話さずに済むからでしょう?

ヤマトさんにだけ結婚の話をしなかったのは、彼を説得できないとわかっていたからでしょう?


そういうのは、あなたらしくありません。

これじゃやっぱり、あなたも迷ってるんじゃないかって、私もヤマトさんも思ってしまう。

慌ただしく動くことで、見ずに済ませたい、振り切りたい何かがあるんじゃないかって思ってしまいます。


私は、延大さんを見送った後、ヤマトさんが少しひとりの時間を過ごしてから帰ってくる気がして。

ここで待っていても仕方ないと思い、テーブルを片づけるため、リビングダイニングへ戻った。



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