ヴァイス・プレジデント番外編
ネットワーク部門の増強と同時に本格的な拡張の始まった、ビジネスユースのサービスに携わることになった私は。

制作前のプランニング時期は、プランニングとはなんぞやという勉強に追われ。

半年以上が経過し、サービスの根幹ができあった今、ようやく自分がプランナーとして動けていると思えるくらいになった。


今後の社運がかかっていると言われるプロジェクトながらも、開発現場は案外のんびりと陽気だ。

発売したら終わり、のパッケージ商品と違い、ネットワークサービスは、ローンチしてからも半永久的に管理業務が発生する。

むしろローンチがスタートのようなもので、逆に言えば、あとからいくらでも手直しできるため、つくりこみは“ほどほど”でいい。


一応、開発の節目ごとに目標の完成度があり、そこを目指すために忙しさのヤマはあるけれど。

紀子たちのように、数ヶ月休みなしとか数日徹夜とか、そういう状態はいまだに経験せずに済んでいた。

そのため冬休みも、カレンダーどおりに取得することができた。


大晦日と元旦は実家で過ごし、その後は予定どおり、ヤマトさんのマンションでゆっくりしている。

活動的なはずのヤマトさんは一度も、どこかへ行こう、と言い出さなかった。





「おはよう、明けましておめでとう」



会社の前で声をかけられ、振り向いたら和華さんが微笑んでいた。

仕事初めなので早く来たら、秘書の出勤時間帯と重なってしまったらしい。

そういえば、こんな時間に毎朝出社していたなあと思い出して、懐かしくなった。



「休みは、ゆっくりできた?」

「はい、和華さんたちは?」

「久良子と暁と、女3人で年越ししたよ。ありえないよね」



さみしすぎる、と明るく笑う和華さんにつられて笑いながら、通用口の階段を下りる。

久良子さんの様子を訊きたいけれど、言い出せずにいると、察したのか、和華さんが口を開いた。

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