ヴァイス・プレジデント番外編
「あいつもさ、なんだか知らねえけど、ヘコみまくってんの仕事にぶつけるなんて、男らしくて微笑ましいじゃん」
男らしくて微笑ましい…。
再び、どっちなんだという表現だけれども、なるほどヤマトさんにはぴったり来る。
たぶん城さんは、久良子さんや延大さんのこと、ヤマトさんの苦悩に気がついてる。
だけど、何も言わずにいてくれている。
よかったですね、ヤマトさん。
こういう時に、城さんみたいな人がそばにいてくれて。
ヤマトさんが落ちこんでいようがイライラしていようが、お構いなしにお尻を叩いて仕事に向かわせることのできる彼ならば。
せめて職場では、ヤマトさんが余計なことを考えなくて済むよう、わざと忙しくさせたりしてくれるだろう。
たぶん私だったら、それは無理だった。
私は、城さんにもよく言われていたんだけれど、どうやらヤマトさんに対しては過保護すぎる秘書だったらしく。
あいつの甘ったれはそのせいだと、当初何度も城さんに言われた。
実際そうなんだろうと思う。
私は、ヤマトさんが苦悩していたら、休ませてあげるくらいのことしかできない。
今でも、そのくらいしかできていない。
無力だと思うけれど。
ないよりまし、と思うようにしている。
何かを解決に導くような力は、私にはないけれど。
せめて、私といる時は、ヤマトさんが心から安らいでくれたら。
「ヤマトさんを、よろしくお願いしますね」
いつの間にか私よりも長い年月、彼の秘書を務めている城さんに、そう言うと。
任せとけ、と笑って、子供にするように、頭をぐりぐりとなでてくれた。
「今度の金曜、ヒマ?」
「サーバメンテの日ですよね、はい、空いてます」
ある日曜の朝、ふいにヤマトさんがそんなことを言いだした。
午前中のうちに目を覚まして、シャワーを浴びたり遅めの朝食をとったりした後、なぜかまたベッドの上でまどろんでいるような、けだるい休日で。
お互い寝そべって本を読んでいる時に、そんな話が出た。