ヴァイス・プレジデント番外編
かわいそうに、ヤマトさんは見ていて気の毒になるくらい萎縮している。
そりゃそうだ、たぶんルリ子さんに会ったのは、これで3度目くらいなはずで。
そんな相手に、いきなりこの迫力で凄まれて、しかもただでさえ人となじむのに時間のかかるヤマトさんなわけで。
けれど私が口を出すのも場違いかと思い、私はヤマトさんの隣で、なるべく控えめにしているしかなかった。
「いただいていい?」
テーブルの上にあったヤマトさんの煙草を指して、ルリ子さんが言う。
どうぞ、という声すら出ないらしいヤマトさんは、うなずいて煙草の箱を差し出すと、彼女のあとに自分も一本とってくわえた。
続いてライターをとり、ルリ子さんのくわえた一本に火をつけて、自分のぶんにもつけようとすると。
なぜか彼女が、そのヤマトさんの手首をおもむろにつかみ、バンとテーブルに叩きつける。
「誰が吸っていいって言ったの」
片腕をとられながら、驚愕の眼差しで見つめ返すヤマトさんににこりと微笑むと、ルリ子さんは彼の口から煙草をぴっととりあげて、テーブルに投げ捨てた。
城さんも、目を丸くしてそれを見ている。
私はヤマトさんの心中を想像すると、胃が縮むような思いで、そしてなによりも彼女の強烈さに一緒に圧倒されて、硬直していた。
「…何を言われても、俺から話すことは、ありません」
「あなたも、延大とグルってことね」
「兄貴を、そんなふうに言うな」
ヤマトさんが、耐えかねたように声をあげた。
「兄貴は、ルリ子さんを幸せにしようとしてるじゃないか。何が不満なんだよ」
「それは、あなたたちがよく知ってるんじゃないの」
ひたと見すえられて、ヤマトさんが、泣きそうな顔をした。
私は、その手を握って励ましてあげたくなった。
ルリ子さん、それを責めるのは、残酷です。
延大さんは、それが正しい道だと、ちゃんと納得した上で、あなたを選んだんです。
ヤマトさんは、そのことに傷つきながらも、あなたが延大さんを愛してくれそうだったから、なんとか祝福しようとしてるんです。
「ヤマトの兄貴には、他に好きな人がいたんですよ」
そりゃそうだ、たぶんルリ子さんに会ったのは、これで3度目くらいなはずで。
そんな相手に、いきなりこの迫力で凄まれて、しかもただでさえ人となじむのに時間のかかるヤマトさんなわけで。
けれど私が口を出すのも場違いかと思い、私はヤマトさんの隣で、なるべく控えめにしているしかなかった。
「いただいていい?」
テーブルの上にあったヤマトさんの煙草を指して、ルリ子さんが言う。
どうぞ、という声すら出ないらしいヤマトさんは、うなずいて煙草の箱を差し出すと、彼女のあとに自分も一本とってくわえた。
続いてライターをとり、ルリ子さんのくわえた一本に火をつけて、自分のぶんにもつけようとすると。
なぜか彼女が、そのヤマトさんの手首をおもむろにつかみ、バンとテーブルに叩きつける。
「誰が吸っていいって言ったの」
片腕をとられながら、驚愕の眼差しで見つめ返すヤマトさんににこりと微笑むと、ルリ子さんは彼の口から煙草をぴっととりあげて、テーブルに投げ捨てた。
城さんも、目を丸くしてそれを見ている。
私はヤマトさんの心中を想像すると、胃が縮むような思いで、そしてなによりも彼女の強烈さに一緒に圧倒されて、硬直していた。
「…何を言われても、俺から話すことは、ありません」
「あなたも、延大とグルってことね」
「兄貴を、そんなふうに言うな」
ヤマトさんが、耐えかねたように声をあげた。
「兄貴は、ルリ子さんを幸せにしようとしてるじゃないか。何が不満なんだよ」
「それは、あなたたちがよく知ってるんじゃないの」
ひたと見すえられて、ヤマトさんが、泣きそうな顔をした。
私は、その手を握って励ましてあげたくなった。
ルリ子さん、それを責めるのは、残酷です。
延大さんは、それが正しい道だと、ちゃんと納得した上で、あなたを選んだんです。
ヤマトさんは、そのことに傷つきながらも、あなたが延大さんを愛してくれそうだったから、なんとか祝福しようとしてるんです。
「ヤマトの兄貴には、他に好きな人がいたんですよ」