ヴァイス・プレジデント番外編
少し暑いくらいの日差しを、川面からの冷たい風が和らげてくれる。

久しぶりに着た半袖が開放的で、だけど寝転がると芝生がちくちくするので、何か羽織ってくればよかったなあと思っていると。

にこにこしながらこちらを眺めているヤマトさんに、気がついた。



「なんですか?」

「兄貴たちが結婚したら、俺たちも、しようね」



子供の約束か、と言いたくなるような無邪気さだけれど。

芝生の斜面にあぐらをかいて、太陽の光を全身に浴びて、嬉しそうに言う彼に、そんな言葉は引っこんでしまう。

長いこと見ていなかった気のするその屈託のない笑顔に、私は胸の奥が熱くなった。



「俺と、結婚してくれるよね?」



返事をしない私に、少し不安になったのか、首をかしげて、改めて訊いてくる。

そんな仕草が可愛くて、私は声をあげて笑った。



「はい」



笑いながら答えると、ヤマトさんがにこっとする。

並んで座る私を片手で抱き寄せると、今度指輪買いに行こうね、と楽しそうに言った。



「でもですね、ちょっと、条件が」

「えっ」



前々から考えていたことを言おうとすると、ヤマトさんが、ぎくっと固まった。

何を想像してるんだろう。



「…前の女の子のことは、悪いと思いはじめてるよ、最近」

「そのへんを条件に入れたら、永久に結婚できないと思いますので、違います。ご安心を」



いまだにちょくちょく遭遇し、それも毎回違う人、という状態のヤマトさんの過去の女の子たちのことは、もうあきらめた。

どう考えたって、今のヤマトさんは私を好きだし、私もヤマトさんしか考えられないし。

だったら、もう気にする必要もないかなと思ったからだ。

そうじゃなくて、私が言いたいのはですね。

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