ヴァイス・プレジデント番外編
少し酔いから覚醒して、かえって普段より感覚が研ぎ澄まされているような、ちょうどそんな段階に、私の身体はあった。

優しく、ひたむきに、びっくりするほど紳士的に触れられる感覚に、意識が侵略される。

やっぱりこの人、見た目ほど軽薄じゃない、と納得した矢先に、急にいたずらをしかけてきたりするその茶目っ気に笑って。

柔らかいベッドと、たっぷりの羽毛の枕に埋もれながら、抱きあって。

自分の身体が、あきれるくらい熱くなっているのは、果たしてお酒のせいだけかしらと、首をひねった。





「デセールも届けてくれたよ」



スラックスとシャツだけをざっと身に着けた延大さんが、サービスのワゴンをベッドの横につけた。

サイドテーブルにワインとグラスを置くと、ケーキとフルーツが美しく盛られたプレートを手に、再びベッドへ上がってくる。

裸でシーツにくるまったままだった私は、それを見て歓声をあげた。

途中でほうり出してきたフルコースの、残りのデザートが、ワインと一緒に届いたのだ。



「少しお腹がすいてたんです」

「ごめんね、がっついて…」



反省してます、と苦笑いをしながら、延大さんが私の枕元に座る。

フロマージュのケーキを、フォークに乗せて差し出してくれるのに、素直に口を開いて、濃厚な生地と甘酸っぱいソースを味わっていると、自分もひと口食べた延大さんが、白ワインのボトルを手に隣に寝そべった。


せっかく抱きあえるんだからと思って、前もとめていないシャツを、その肩から脱がす。

フォークをくわえて、寝っころがったまま、延大さんが器用に袖を抜く。

今でも定期的に道場で身体を動かすというその上半身は、綺麗に引き締まっていて美しい。

フォークを口から引き抜いてあげると、おかしそうに笑った彼が、プレートに盛られたフルーツをひとつ、直にくわえとって。

お互い、なぜか噴き出してしまう中、口移しで食べさせてくれた。



「今夜は、飲むよ」

「まだ飲むんですか」



あたり前じゃん、とベッドに置いていたボトルからコルクを抜いて、グラスに注いで渡してくれる。

自分はボトルから直接飲みながら、ことあるごとに、あちこちに濡れたキスを降らせてくる。

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