ヴァイス・プレジデント番外編
私たちの結婚よりも早く、現地の男性と再婚していた彼女は。
さばさばと陽気な性格で、今の夫に出会えたのも延大と結婚したおかげ、と言いきって笑うくらい、底抜けにポジティブな人だ。
私たちがお互いを気に入ってしまったことで、つきあいは続いており、延大さんはいまだに複雑な面持ちでそれを見守っている。
「お義父さんのお墓にも寄りたいね」
「できたらでいいわ。お盆にも行ってるし」
高台にあるあのお墓は、こんな冬に行くにはなかなか寒い。
無理しなくていいわよ、と言うと、延大さんは優しく笑って首を振る。
「お義母さんひとりじゃ、行くの大変でしょ。つれてってあげないと」
「あの人は、延大さんが一緒に行ってくれるのを楽しんでるのよ。お墓なんてどうでもいいの」
数年前、祖父母の骨について親族と返却の約束をしたことを打ち明けた時、彼女はからからと笑って、そんなの返しちゃって、と手を振った。
「お墓の中にお父さんがいるわけじゃないもの。骨なんてどうでもいいわ。今すぐにだって返してきたいくらい」
「そうなの?」
「そうよ」
地域の仕事などに加わりはじめて、すっかり若い頃の美しさをとり戻した母がにこりと笑む。
「私たちが、彼をいつも心に想い描いていれば、それでいいのよ」
それはとても納得できる論理で。
そうね、と私はうなずいた。
けれど今、あのお墓には、返す約束のない祖父母の骨が眠っている。
母はああ言うけれど、父の遺志として、永遠に一緒に納めてあげたいと、もう一度私が交渉に行ったのだ。
さばさばと陽気な性格で、今の夫に出会えたのも延大と結婚したおかげ、と言いきって笑うくらい、底抜けにポジティブな人だ。
私たちがお互いを気に入ってしまったことで、つきあいは続いており、延大さんはいまだに複雑な面持ちでそれを見守っている。
「お義父さんのお墓にも寄りたいね」
「できたらでいいわ。お盆にも行ってるし」
高台にあるあのお墓は、こんな冬に行くにはなかなか寒い。
無理しなくていいわよ、と言うと、延大さんは優しく笑って首を振る。
「お義母さんひとりじゃ、行くの大変でしょ。つれてってあげないと」
「あの人は、延大さんが一緒に行ってくれるのを楽しんでるのよ。お墓なんてどうでもいいの」
数年前、祖父母の骨について親族と返却の約束をしたことを打ち明けた時、彼女はからからと笑って、そんなの返しちゃって、と手を振った。
「お墓の中にお父さんがいるわけじゃないもの。骨なんてどうでもいいわ。今すぐにだって返してきたいくらい」
「そうなの?」
「そうよ」
地域の仕事などに加わりはじめて、すっかり若い頃の美しさをとり戻した母がにこりと笑む。
「私たちが、彼をいつも心に想い描いていれば、それでいいのよ」
それはとても納得できる論理で。
そうね、と私はうなずいた。
けれど今、あのお墓には、返す約束のない祖父母の骨が眠っている。
母はああ言うけれど、父の遺志として、永遠に一緒に納めてあげたいと、もう一度私が交渉に行ったのだ。