ヴァイス・プレジデント番外編
猥雑な背景に似合わない、涼やかで清潔な姿が、うす汚れた壁に寄りかかって、熱心に競馬新聞を読んでいた。



「あら、また会ったわ」

「また会ったわって、よく来るの、彼?」

「ええ」



微笑んだ暁が、楚々とした仕草で彼に駆け寄り、とんと肩を叩く。

赤ペンで新聞にチェックを入れていた彼は、顔を上げてにこりと微笑んだ。

暁がこちらを振り返って、手で指し示す。

彼は私を見ると、少し驚いたように目を見開いて、でもそれなりに嬉しそうに笑い、近づく私に会釈をくれた。



「お久しぶりです、和華さん」

「和之さんも、お元気そうで」



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