ヴァイス・プレジデント番外編
「煙草が吸えるお店に移ってもいい?」
「いいよ、一本くれるなら」
「あら、やめたのかと思ってた」
「減らしただけ」
和之さんが勘定を済ませてくれたので、おかわりの分だけが書きこまれた伝票を取り上げながら、暁がふんと笑う。
いいのいいの、今日は自分を甘やかすの。
だって、こんなに何もかも、少しずつずれてうまくいかないのを目の当たりにして、これ以上、我慢とか辛抱とか、もう考えたくない。
みんなの想いが、天に届きますように。
そう願って、火をともそう。
煙みたいに昇華されて、いつか全部が素敵におさまる日が来ますように。
無力な私は祈るだけ。
暁は、そんな沈みかけの心を見透かしたように。
お酒も飲めるお店を探すっていうのは、どう? と。
照りつける太陽の下、汗ひとつ見せずに。
私を振り返って笑った。
Fin.