ヴァイス・プレジデント番外編
同じくらいの身長のふたりなので、並ばれるとなかなか見ごたえがあるなあと思っていたら、ヤマトさんが不満げな声を上げた。



「すずにやってもらうほうが嬉しいんだけど、こういうの」

「お前、いつまでもすずちゃんを自分のもんだと思ってんなよ」

「俺のもんだろ、どう考えたって」



いいからさっさと行け、と追い立てられたヤマトさんは、私を振り返って、すまなそうに言った。



「ごめん、すず。またね」

「はい、お気をつけて」



気になさらず、という思いで笑ってみせると、ヤマトさんも微笑んで、テーブルの伝票をとりあげて入口へ向かう。

城さんはにこやかに笑いながらひらひらと私に手を振ると、その伝票をぴっとヤマトさんの手から奪った。

それをまたヤマトさんがとり返して、結局勘定は彼が済ませたのが、私の席から見える。


こういうのを経費で落とすのを、何よりも嫌うヤマトさんだ。

城さんも、それをわかっていて、からかう。

ふたりはいいコンビだった。



城薫(かおる)という名前だけ知らされていたので、引き継ぎ当日、本人に会うまで、私もヤマトさんも、女性が来るとばかり思っていた。

ところが人事部の会議室にいたのは、細身のスーツをぴしりと着こなした背の高い男性で。

あれっ、後任の方はどこにいるの? と一瞬室内を見回したくらいだった。



「城薫と申します」



にこっとそう微笑まれ、思わず横の木戸さんを呆然と見ると。

彼はなぜか満足げに、うむ、とひとつうなずいてみせた。



「木戸さんのメッセージを感じるよ」

「どんなですか」

「もう、てめえに食わすもんはねえ、ってことだろ」



城さんをつれて引き継ぎの挨拶に行くと、同じくヤマトさんもぽかんとして。

私とふたりになった時、面白くなさそうにそうこぼした。

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