許嫁な二人
(13)
「冬休みとはいえ、受験をひかえた身としては
遊んでなんかいられないわよね。」
終業式を終えた帰り道、有未がふーとため息をついた。
「あーあ、唯は短大に推薦なんでしょう、いいな。」
「うん、どちらにしろ将来は巫女さんになって、父さんの
仕事を手伝うつもりだし、有未は獣医をめざすんだもんね。」
「そう、この冬休みががんばりどころなの!」
「がんばれ。」
「それにしても悪かったわね。今日は帰りが瀬戸くんと一緒
じゃなくて。」
突然話しをかえて有未が唯をからかうから、唯の頬が赤く染まった。
「ちょ、そんなんじゃないから。」
「えー、でも文化祭からこっちずっとでしょ。帰りに瀬戸くんが
送ってくれるのって。
もう公認のカップルじゃない。」
「本当にそんなんじゃないから!」
南高のチンピラに絡まれてからこっち、透は毎日のように唯をバス停
まで送ってくれる。
” 南高のやつらに目を付けられたからあぶない” と言って。
冬休みになるまでそれは続いて、唯は透と付き合っているのだと
誤解をうけている。
(ほんとうにそんなんじゃない、、、だって好きともなんとも
言われてないし)
チンピラに絡まれた夜、透に抱きしめられたのは、今でも思い出すと
顔があつくなるが、透はもうそんなことはしないし、告白もされてない。
ただ唯をバス停までおくるだけだ。