許嫁な二人

   「はやくしろよ。」

   「でも、、、」

   「いいから!」



 おずおずと背中に体を預けた唯を背負うと、透は歩きだした。



   「私、、重くない?」

   「平気だ、これくらい。」



 そう透は返事をした。

 確かにこれくらいの重さ、たいしたことない。

 でも、別の事で透の心は動揺していた。

 間近にいる唯の息づかいを首の後ろに感じる。
 シャンプーの匂いだろうか、、良い匂いがする。

 でも、シャンプーの匂いばかりではないような気がして、、、。

 気を紛らわせたくて、透は大きな声をだした。



   「なんだって、あんなところに居たんだよ。」

   「お風呂からでて、みんなを待ってたら、あの男の人に
    無理矢理ひっぱられていって、、、。」

   「なにっ。」

   「モデルにならないか、とかなんとか言われた。」

   「おま、お前、それ危ないんじゃないの ばか!」



 ばか、なんてひどい、、、と唯は思った。
 
 でも、そんなに背も高くないし、がっちりもしていないのに
 透の背中は心地よくて、、、、いつまでもこうして
 いたい気持ちになる。


  (透くん、、、)


 唯は胸の内だけで、そっとその名をよんでみた。

 
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