許嫁な二人
目の前には静かに唯をみる透がいる。
透の将来のためにも、碓氷の家のためにも、許婚の話はなかったこと
にしてくださいと言えばいいとわかっているのに、、、。
ぽろりと一粒、涙がこぼれたら、もう止まらなかった。
「ず、ずるい、、透くんは。
私が決めれないってわかっているくせに、、、。」
透の大きなてが、頬をつつんで涙をふいてくれる。
でも、そんなことをしても追いつかないほど、涙はあふれて
頬を濡らした。
「すまない。」
そう一言、言葉が落ちてきたら、抱きしめられて唇を重ねられていた。
”好き” ”透くんが好き”
唇から与えられる熱とともに、突然、透を思う気持ちで胸がいっぱいになり
唯は夢中で、透のキスを受け止め、透を抱きしめた。
”今だけ、どうか今だけ、、ゆるしてください”
唯は誰にということもなく、心の中で許しを乞うた。
お見合いはことわってほしいと告げた唯に両親はなにも言わなかった。
許婚のことについては、まだ何も言えない唯だったが、
透とは、時間がある限り一緒にいるようになった。
今は一緒にいる時間を大切にしたい、、、。
でも、それはただ問題を先送りにしてるだけだ。
生真面目な唯にはそのことが心の重荷になっている。
透といっしょにいる時間が幸せであればあるほど、
ひとりになった時、唯は深く考え込んでしまう。