許嫁な二人

 5分ほど歩いて離れの前につくと、唯は透の背からおりた

 背中が軽くなって、ほっとするような、なんだか
 名残惜しいような、、、。

 透は無意識に手を握ったり、開いたりした。

 なにか大切なものが、この手からするりっと逃げていった
 気がする。



 隣をみると、唯が眉をハの字にさげてしょげている。



   「さっさと行くぞ。」



 透がそう声をかけて先にたって歩き、自動ドアをあけて離れの
 玄関に入ると、何人かのグループでかたまって話しをしていたらしい
 同級生の視線が、さっと透を見た。



   「瀬戸くん、、、。」



 そして透の後ろから入ってきた唯を見て、声があがる。



   「碓氷さん!」

   「唯ちゃん!」



 真っ先に、良世が駆けてきた。



   「よかった、唯ちゃん、どこ行っちゃったかと思ったんだよ。」

   「ごめんね。」

   「いいよ、いいよ。」



 数人の子が、”先生に知らせてくる” と駆け出していき、ざわざわと
 騒がしい中にピューっと口笛の音が響いた。
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