許嫁な二人
(16)
『、、、だから、いいか? 唯?」
そう透から声をかけられて、はっと我に返った唯はあわてて笑み
をうかべた。
「ごめんなさい、なんだった?」
そう問い返した唯の顔色が悪い気がして、透は手をのばして
唯の頬にふれた。
ぴくんと体をふるわせて、唯がつっと身を引く。
「透くん、人目のあるところではいやっていったでしょ。」
顔を赤らめながら、ふくれっ面になった唯が透をにらむが、
透は意に介さず今度は唯の額に手をあてた。
「顔色が悪いぞ、熱はなさそうだけど。」
「もう。」
唯は今度は自分の手で額にある透の手をどけると、本当に頬
をふくらませた。
たしかに、今いるのは街中のカフェで、人の目はあるが、
そんなことより、透は唯の体調の方が大切だ。
「時間いいの?今日は授業あるんでしょ。」
そう言う唯に透は曖昧に頷くと
「今日は授業はさぼって、学校見学にいこうと思っているんだ。」
と言った。