許嫁な二人
梅雨空から、今にもぽつんと雨がおちてきそうな日だった。
急ぎのレポートがあるからとデートをことわった透に、決して邪魔を
しないからアパートにいかせてほしいと唯が珍しく我儘を言い、
二人は透のアパートで過ごしていた。
透がレポートから目をあげると、キッチンで料理をしていた唯が
航空機関係のテキストや透の飛行機関係の蔵書を広げて見ていた。
「どうしたんだ、そんなもの見て。」
「ん、透くんって勉強家だなと思って見てたの、
書き込みがいっぱい。」
「授業についていくだけで精一杯だからな。」
照れてそういう透に
「でも、、、本当は好きだからでしょ。」
と唯が言った。
確かに、、、と透も思う。
なんで飛行機が好きになったのかなんていうのは覚えて
いないが、幼稚園の時には飛行機の図鑑を飽きもせずながめていた。
「この本は、小学校の時初めて買ってもらった飛行機の図鑑。
宝物だった。」
「すりきれて、ぼろぼろだね。」
唯の手が、愛おしげに本を撫でる。
そんな唯のみて、ふっと笑みをもらし、透はまたレポートにとりかかった。