許嫁な二人
その日、大学から帰った透は、郵便受けにはさまった白い封筒を
目にして訝しんだ。
自分に手紙を送ってくる相手など思いつかない。
それに今はメールで事足りる。
前に手紙をもらったのは一体いつのことだったか。
封筒の裏をかえして、差出人のところに唯の名前をみたとき
なぜか嫌な予感がして透は慌てて封をきった。
短い手紙だった。
実家に帰ること、もう逢わないこと、
透には自分の夢を追いかけてほしいこと、、、。
最後にお元気でと書かれて、手紙は終わっていた。
なんの冗談か、、、と透は思う。
だって、俺たちはあんなに愛を確かめ合ったばかりじゃないか。
それなのに、、、。
今度こそ手に入れたと思ったのに、唯はまた透の前からいなくなった。
玄関の扉に背中をあずけたまま、ズルズルと透はしゃがみこんだ。
タイルの床がひんやりと冷たい。
手が震えているので、握りしめた手紙が、がさがさといやな音をたてた。